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診療科・部門

手くびの骨折、橈骨(とうこつ)遠位骨折をご存知ですか?

橈骨遠位骨折とは

 手くびには橈骨(とうこつ)、尺骨(しゃっこつ)という2つの骨があり、その先に手根骨(しゅこんこつ)という8つの小さな骨があります。橈骨遠位骨折は、親指側にある橈骨という骨が折れる、上肢では最も頻度の高い骨折です。救急外来で治療される全身の骨折の6分の1は橈骨遠位骨折と言われています。
 頻度が高いのは、50代以降の女性がつまずくなど転倒して手を突くことによっておこる骨折です。骨粗鬆症(こつそしょうしょう)により骨がもろくなっておこる骨折で、脆弱性骨折(ぜいじゃくせいこっせつ)と言います。一方、骨が強い若年者や男性でも転落、走って転倒するなど手くびに強い力が加わると骨折が起こります。

症状

 骨折が起こると、手くびが強く痛み、腫れてきます。変形が生じることもあります。痛み・腫れのため、手くびの運動や握り動作が困難になります。

診断

 診断はレントゲン写真で行います。複雑な折れ方、関節に骨折が及んでいる場合にはCTを撮影します。靭帯損傷、軟骨損傷を疑う場合にはMRIを撮影します。50歳以上の女性には、骨塩量を測定して骨粗鬆症の検査をすることを勧めています。
 骨折には、ヒビが入っているだけでほとんどズレのないものから、骨片が大きくずれているもの、骨折が関節に及び関節の表面が陥没しているものなど、様々なタイプがあります。大きく分けると、骨片が手の甲側にずれるColles(コレス)骨折と(下図参照)、手のひら側にずれるSmith(スミス)骨折の2つのタイプに分類されます。

治療

 骨折の治療は、1)整復(骨折のズレをもとに戻すこと)、2)固定、3)リハビリテーション、の3つの過程からなります。橈骨遠位骨折も同様ですが、整復法、固定法には様々方法があります。患者さん一人ひとりの骨折のタイプ、年齢、ライフスタイル、健康状態を考慮して治療法を選択します。
 ほとんどズレのない骨折や引っ張ることで容易に整復される骨折では、ギプス固定を行います。ギプス固定中に骨折部にズレが起った場合や、もともとズレが大きい骨折では手術を行います。骨片のズレを元に戻し、金属で内固定します。近年はプレートとスクリューを用いた手術が多く選択されます(下図参照)。その他に、鋼線固定、創外固定などの方法があります。
 どんな治療法にも利点と欠点があります。ギプス固定は手術をせず、外来通院で行うことができますが、骨折が治癒するまで、通常4週~8週、ギプスを装着する必要があります。その間、手は使いにくく、手くびや指の関節が固くなる危険性があります。一方、手術によるプレート・スクリュー固定では、全身麻酔や入院が必要で、合併症のリスクもあります。しかし、骨片を正確に整復することができます。また、手術後は通常ギプス固定は不要で、早期からリハビリテーションと手の使用が可能です。当院では骨折の手術、リハビリテーションを一貫して行えるようプログラムを作成しています。当院の橈骨遠位骨折の手術実績は、平成26年度が57例、平成27年度が42例です。

コレス骨折のレントゲン写真
左図:骨片が手の甲側にずれたコレス骨折。
コレス骨折手術後のレントゲン写真
右図:手術で骨片を整復し、プレートとスクリューで内固定を行いました。

おわりに

 橈骨遠位骨折に治療には様々の方法があります。当院では、個々の患者さんの骨折のタイプ、年齢、ライフスタイルなどに応じ、丁寧な説明と情報提供を行い、患者さん・ご家族が最善の治療法を選択できるよう努めています。医師、看護師、作業療法士がチーム医療で患者さんの治療を行います。日本手外科学会のホームページもご参照ください。

 

北海道済生会小樽病院 整形外科 病院長 和田卓郎

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